諜報部からの書類に、君の写真が添付されていた。某大学構内。憎らしい希代の演説家の隣に立つ君。隠し撮りしたはずなのに、こちらをまっすぐ睨んでいる。ミルクティ色の髪に、鬱蒼と生い茂る森のような瞳。そして意志の強さをそのまま示す眉。口元には挑発的な笑みが刻まれている。それら全てが、僕の神経を逆撫でして苛立たせる。
ねえ、僕は、世界中全ての国を愛しているんだ。この極寒なる大地も、灼熱の砂地も、見渡す限りの草原も、蒸し暑いジャングルも、コンクリートだらけの狭い土地も、海に囲まれた小さな島々も大陸も、みんなみんな大好きなんだ。全部この腕に抱いて、そしてみんなが等しく和やかに暮らせたら、どんなに幸せだろう。考えるたびに僕はみんなを愛しく思う。愛しいみんなが欲しくなる。
でも、君だけはいらない。
だって君はいつも僕の邪魔をする。僕の気持ちも考えず、気に食わないからという理由だけで、いつもいつもいつも君は僕の邪魔をする!
鉄のカーテンの向こう、気紛れな天候に荒れる海の更に向こう、陰鬱な霧を纏って、君はいつだって悠然と構えている。高慢な目で辺りを見渡す。僕を焼き払うための火種をばら撒く。昨日の敵をもそそのかして、僕の邪魔をする。僕を非難する。僕を否定する。僕の指を腕を神経を削り取っていく。
ああどうしてわかってくれないんだ?みんなと仲良く暮らしたいという僕の夢を、どうしてわかろうとしないんだ!世界広しといえども、こんな石頭の分からず屋は君だけだ!だから僕は君が嫌いなんだ!
大嫌いな君/英嫌いな露/2007.04.29.
諜報部→かーげーべー
某大学→みずーり州ふるとん市うえすとみんすたー大学
希代の演説家→終戦からたった半年後に件の演説をした元英首相
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