肌の色や顔立ち、使う言語などは似ているが、それでも彼達の中身は似ていない。いつでも明朗快活で元気いっぱいの少年(と形容しても差し支えないだろう)と、むやみに沈黙を打ち破らない彼。ずいぶんと違うものですね、と誰にともなく呟けば、縁側で庭を眺めていた彼は「どうかしたか?」と私を振り返った。
金色の髪が、暮れはじめた陽の色に染まっている。黒髪ではありえない、溶けるような光の色彩。とても美しいとは思うが、あまりじろじろ見るのも失礼だろう。目を伏せて「いいえ、なにも」と答えれば、彼は「そうか」と頷いて視線を戻す。他人の私情には踏み込んでこない。かといって、他人に無関心というわけでもない。彼が取るこの距離は、不思議と心地良い。
穏やかな沈黙が流れていく。朱に染まった空で、黒いカラスが町から山へと飛んでいく。軒先に吊るした風鈴が、ちりん、と静かに鳴る。
ちりん、ちりぃん、ちりりん、ちりりんりんりりりりりりりりどたどたどかばしんっ!
「にほ――ん!聞いてくれよさっきそこで」
「てめえ少しは礼儀をわきまえろ!靴を脱げ!敷居を踏むな!」
「やあイギリス久しぶり!相変わらず景気悪そうな顔してるな!」
「人の話を聞け!靴を脱げ!イグサはデリケートなんだぞ!」
ああ、一瞬にして空気を入れ替えてしまうこの元気さといったら!いっそ羨ましくなるほどだ!
「ふふ……若いということは、結構なことですねぇ」
「しっかりしろ日本!ここはきっちりと自己主張すべき場面だ!現実逃避してないで怒れ!」
「なに言ってるんだい?主張っていうのは、常にすべきことじゃないか」
「てめえは黙ってろそして靴を脱げ!」
「わかったよ。でもそんなにうるさく言わなくてもいいじゃないか」
不満そうに唇を尖らせながらも、少年はやっと靴を脱いだ。そして脱いだ靴を持ち、軽快な足取りで玄関へと向かう。彼が踏みしめた畳と敷居、そして廊下には、遠目にも判るほどの足跡が残されている。文字通り土足で上がりこまれたのだと思うと、ため息が出そうだ。ああ、なぜ彼はこんなにも元気が有り余っているのか。
「ほんとうに、元気ですねぇ」
「あー、そうだな」
なんとも言えずにぼやいたら、疲れた声が同意してくれた。
縁側から涼しい風が入ってきた。軒先に吊るした風鈴は、ちりりと音を立てている。
涼/日と英と米/2007.05.05.
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