とくに意味の無いはなし
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五日ぶりに家へ帰ったら親と雲水がやたらウザかったので、俺は五分もしないうちにまた家を出た。
自然と乗り込んだのは、三十分で東京に着く特急列車。流れる景色を見るともなしに、リダイヤルの一番でヒル魔へ電話をかける。味気の無いコール音が十三回鳴ってから、ようやく向こうと繋がった。俺を待たせるとは良い度胸だ。ヒル魔は不機嫌な声で「取り込み中だ」と言うが、そんなこと知るか。
「テメー、今どこにいるんだ?」
「ガッコ」
「あ゛?」
「しばらく顔見せてなかったら、この学校は自分がシメたとか抜かす馬鹿が出てな。躾けてた」
「へぇー」
自分で聞いといてなんだが、ヤツがそこにいる理由にまではキョーミが無い。テキトーに流すと、ヒル魔は舌打ちした。
「で、何の用だ」
「ナンか面白い話、ねぇ?」
「、ねえよ」
答えが返ってくるまでにほんの一瞬、間があった。他の奴相手なら気にも留めないほどの、わずかな間だ。だが、頭も舌も良く回るヒル魔にしては不自然だ。なんか隠してるな、コイツ。
「テメー、なんか隠してんな?」
「確証のある話じゃねえんだ。テメーには、裏取ってから話す。今話して勝手に暴れられたら、こっちとしても大損害だからな」
「信用ねぇーなーぁ」
「10時頃にはデータが揃う。その後どっかの店で、」
「おととい行った店が良い」
「三茶のか?」
「そうそう。あのハワイアンっぽいダイニングバー」
「リョーカイ」
時間と場所を決めると、通話は一方的に切られた。相変わらず勝手な奴だ。電話口だと声しか聞こえないから、余計にそう思う。
現在の時刻はPM 8:12。十時まではあと二時間弱もある。東京まではあと二十五分。さて、残りの一時間二十分をどうやってつぶそうか。考えながら着歴を遡り、適当な女の番号を探す。その途中に何度かヒル魔の番号を見つけて、そういえばあいつは俺が今どこにいるのかを訊いてこなかった事に気付いた。まあ、訊かなくても判っただけなのだろうが。
阿含とヒル魔/2006.08.13.
中坊時代の話。会話が書きたかったんです。
阿含にとってケータイはコミュニケーションの道具ですが、
ヒル魔にとってはただの通信機器、みたいな。
BGM/orangenoise shortcut「Sunday Rocker」