Endless days

12.体で覚えろ (十文字/盤戸戦前)

 どぶろくはいつも酒を飲んでいるアル中のくせに、力が強い。もう孫がいてもおかしくない年だというのに、俺の体もアッサリと投げ飛ばす。ちくしょう、なんだかんだ言って、こいつも化け物じみてるな。(考えてみれば、あの三人にアメフトを教えた奴がまともな人間な訳無いか。)

「なあ十文字。俺にはもう力なんて無え。体に染み付いた技術が、少し残ってるだけだ。でもな、今のお前を投げ飛ばすには、その少しの技術だけで充分なんだ」

 投げ飛ばされグラウンドに這いつくばっている俺に、どぶろくは言った。……この野郎、一発殴ってやろうか。と、俺は勢いをつけて起き上がる。
 するとアル中オヤジは意外にも真面目な顔で「今のはな、」と先程の技術とやらの説明を始めた。俺は拳を解いて耳を傾ける。一言一句として聞き逃してなるものか。