three and out!!

1.


 とんでもない写真を撮られ脅され日向を歩けなくなった俺達は、悪魔の棲む学校をフケて近くのファミレスで昼飯を食っていた。平日の真昼間のファミレスなんて、ガラガラもいいとこだ。一応今はランチタイムだが、わざわざファミレスで昼食を取るような社会人はそんなにいないのだろう。店内には俺達三人と、あとはレジの隣に置いてあるおもちゃを買ってもらってゴキゲンなガキとその母親しかいない。がらんとした店内は活気が無く、照明も中途半端に暗い。外が明るい分余計に。
 しかしここのスープバーはファミレスのくせに味が良いので重宝している。安いしな。という訳で俺はスープバーのみを注文した(出費は極力控えなければならない。今月は欲しい漫画がバカみたいに集中して発売されるからだ)。しかしそれだけでは当然足りないので、あとは十文字のロースとんかつ御膳の肉一切れと付け合せのたくあんと、黒木のチーズハンバーグセットのミニサラダといんげんとキャロットグラッセを食って耐える事にした。持つべきものは好き嫌いの多い友人である。

 そして数分で一通りの皿を空にした二人は、昨日のドラマの話を始めた。だがあいにく俺はドラマなんぞ見ていないし興味も無い。テキトーな相槌を打ちつつ、かばんから表紙のよれよれになったボクシング漫画を取り出して読む事にしよう。良い漫画は何度読んでも良いもんだからな。

「つーかトガもたまにはドラマ見ろよー」
「昨日のはコントみたいで面白かったぞ」
「そうかそりゃうまそうだ」
「あいづちが話題にかすりもしてねーよ!!」
「あ、ケータイ鳴ってら」

 どこかで聞いた事のあるような黒木の叫びを流して、十文字はポケットからケータイを取り出した。三人でいる時に、こいつや俺のケータイが鳴るなんて珍しい。黒木はゲーセンでの人脈があるから、しょっちゅうメールを打ったりしているが。
 「見たことねぇ番号だな」と少し不審がりつつ、十文字は通話ボタンを押した。


「出るのが遅ぇんだよ糞長男!俺からの着信はワンコールで取れ!」


「……は、」
「はぁ?」
「はぁぁぁあああ!?」
「「「ヒル魔ッ!??」」」
「ハァハァ言ってねーでとっとと屋上に来い!この糞三兄弟!!」

 鋭い声と共に通話は切られた。俺ら今ファミレスにいるのにとか、なんで番号知ってんだとか、そもそも俺らは兄弟じゃねぇとか、叫ぶヒマも無い。
 とにかく一刻も早く学校の屋上へ行かなければ、何をされるか判ったもんじゃない。というかまず間違いなく例の写真はバラまかれるだろう。あんなもんを実家にまで送り付けられたら……俺はきっと死ねる。
 「なんか知んねーけどとにかくやべぇ!」とか叫びながら、俺達は全力で走った。



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