11 女王の酒 (エレキ)
夜中の一時ごろ、ユーズさんとナイアが二人で店へやってきた。おれはすぐにでも、あの曲の二列階段と皿をどうさばけばいいのか聞きたくなったが、あいにく今は仕事中だ。前にナイアが「接客業をなめないでちょうだい」と嫌そうな表情で言っていたことを思い出す。ナイアは棘のある言葉で人のことをグサグサと刺すから苦手だ。ユーズさんはこんな高飛車な女王様みたいな女と一緒にいても平気なのかな。……平気なんだろうな。今だって二人は自然な動きでカウンター席へ並んで座ってるし。
ユーズさんがこっちを見て片手を上げて呼んだので、おれはカウンターの中へ入って二人の前に付いた。
「久しぶりやなあ」と笑うユーズさんの隣で、ナイアは唇を笑みの形にして「なにか作って」と言ってきた。なにかってなんだ。リクエストならせめて、こんな感じがいい、とか少しでも条件を付けてくれればいいのに。
おれが困っていると、ユーズさんが助け舟を出してくれた。
「お前なあ、どんなんが良いか言ってやらんと」
「私に似合うカクテルが良いわ」
うわあ。即答でしかもこんな高飛車にその台詞を言われたのは初めてだ。やっぱりナイアは女王様だ。
というわけでマンハッタンを作ったら、ユーズさんは大笑いして、ナイアは目を細めてふふ、と微笑んだ。