緩やかに広がっていく一本道

2.


 チカラまかせに暴れるしか能の無いクソガキが。この程度で俺達を打ち負かしたつもりか?勝ち誇った顔しやがって。冗談じゃねえぞ糞ドレッドめ。

 久々に袖を通したジャケットは、布がもたついて動き辛い。考えてみればここのところ、学ランがジャージかユニフォームしか着ていなかった。そもそもこのジャケットもマフラーも、俺の趣味というよりはあの糞ドレッドの趣味だ。
 ち、と舌打ちをしてマフラーを外す。暑い。こめかみから頬を伝って汗が落ちる。吐く息が白いのは、寒さのせいではない。

 俺はガラにも無く走っていた。二人のもとへと。これからすべき事は決まっていたが、あの二人に会わなければどこにも進めはしない。
 それぞれの自宅には「今日は遅くなる」という連絡が、ムサシによってなされていた。そして俺の新しいケータイにも、公衆電話からの着信が二件。番号を知っているのは二人だけだから、この着信もムサシからだろう。栗田は恐らく、電話のできる精神状態ではない。
 難なく手に入れた目撃情報によると二人は一緒にいるらしいから、一先ずは大丈夫だろうが(栗田の巨体はこんな時にも役立つ)……念のために現状を確認しようにも、二人はケータイを持っていない。クッソ、せめて留守電くらい残しとけ!

 もうひとつ舌打ちを吐き捨て、左端線下り方面の電車へ駆け込む。最後の目撃情報は、泥門二丁目商店街だ。



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