4.
あの時、頭の中が真っ白になった後にこみ上げてきたのは、申し訳ないという気持ちだった。
僕のせいで二人を道連れにしてしまうのかと思うと申し訳なくて。何度ごめんねと繰り返しても、全然足りなくて。苦しくて苦しくて。このまま僕なんか消えちゃえばいいのに、と本気で思った。
ただ情けなく泣く事しか出来ない僕に、ムサシはずっと付き添っていてくれた。涙が止まるのをじっと待ってくれて、その後も余計な話はせずに、でも色々と世話をしてくれた。あの時ムサシが傍にいてくれなかったら、僕は屋上から飛び降りたかもしれないし線路に飛び込んだかもしれないし首を吊ったかもしれない。
ヒル魔は凄く怒っていて恐かった。冷たい声で「テメーの責任じゃねえ」なんて言われた時は、体が凍って動かなくなるんじゃないかと思った。ヒル魔は本気で怒っていた。それなのに怒りを僕に向けようとはしなかった。というよりは、他のものに対して怒っているみたいだった。もしかしたら自分に対して怒っていたのかもしれない。悪いのは僕なのに。
誰がどう見ても僕のせいなんだ。道行く人百人に聞いたら、九十八人は僕を指差して「お前のせいだ」と言うに決まっている。
でも、それでも、この二人はそんな事言わないし、思ってもいないんだ。
テーブルの上にばらまかれた資料を手に話し始めた二人を見て、僕はまた泣きたくなった。必死で我慢したけれど駄目だった。心配そうに僕を労わる目と、心配すんなと僕を元気付ける目を向けられて、また泣いてしまった。蛇口の壊れた水道みたいに、涙がどんどん流れていく。
ヒル魔が怒鳴って僕のお腹を蹴る。それをムサシが苦笑いしながら、やんわりと止める。するとヒル魔が今度はムサシに怒鳴る。ムサシはやっぱり笑いながら言い返す。僕はずっと泣いている。
泣きながら僕は思った。こんなに素晴らしい仲間と一緒に歩いていけるなんて、僕は三国一の幸せ者に違いない、と。