5.擬似家族? (戸叶)
部室に入ったら武蔵センパイがやけに慣れた仕草で新聞を広げていたので、俺はその場で足を止めてしまった。いやいやサマになりすぎだろオッサン。まるで一家の主じゃあないか。
その隣では雪光センパイが辞書やら参考書やらを広げている。お勉強中ですか。文字だらけの本なんて、見ているだけで頭が痛くなりませんか?なりませんか、そうですか。
というかこの光景は、新聞を読むお父さんと真面目に宿題を片付ける息子……夕飯前の居間かここは。しかしできれば、こんな派手派手しいテーブルではなく、ちゃぶだいが良いな。そうすれば、昭和の家族ですと言っても通るだろう。いや通っても困るんだが。
そんな事を考えながら空いている席に座りマンガを広げる俺は、さしずめ勉強もせずに遊んでばかりの弟、といったところか。