14.あいつはいつも舞台の上 (黒木)
瀧はいつもリアクションがオーバーだ。いつもいつも、今にでも歌い出してミュージカルを始めそうな、なんかの舞台俳優みたいなポーズをとる。たとえば今だってそうだ。
壁際に立った瀧は、右手を壁につけて、左手で俯いた顔を隠している。一目で、落ち込んでいることがわかるポーズだ。わかりやすすぎて、かえってウソくさいけど。
「どしたんだよ?」
「ああっ!聞いてくれるかい黒木君!実は鈴音がなぜか怒ってるんだ……僕には全く理由がわからない。いったいどうしたらいいんだ!?」
「俺に聞くなよ!」
「そうか……ごめんよ。僕にもわからない事が、黒木君にわかるはずなかったね」
「はああ――ッ!?」
こ、い、つ、まじでムカツク!勝手に喋って人のことバカにしやがって!ちくしょうコイツぶん殴ってやる!ああもう放せよトガモンジ!止めてくれるなッ!
手をぶん回して暴れてみても、二人がかりで抑えられちゃ敵わねえ。つーか何で止めるんだよ。いつの間にこんな温厚になったんだよ二人とも。そろいもそろってため息なんか吐きやがって。俺一人だけバカみたいじゃねえか。
そんなこんなでギャーギャーわめく俺達を見て、瀧は「ああそうか!兄弟ゲンカってそういうものだよね!」とか叫んだ。そしてアハーハと高らかに笑ってスキップしながら、どこかへ走って行った。